top of page
大堀 勝利

安全講話


先月一次会社の安全衛生推進大会が行われ講話としてお話させて頂いた全文です。

今日は現在の建設業界における数ある問題点について、ネット上の記事を抜粋し私なりの解釈と今後の展望ということで話をさせて下さい。

国内の事故比率ですが他社や他産業又は年次別の状況、おそらく現場の安全大会でしたり普段の定例会議、年度末における事故件数の総括などでよく耳にするかと思われます。

しかし皆さんは日本の安全について世界の先進国の標準的な災害比率からするとどうお思いでしょうか?

今回は分かり易くドイツ、イギリス、日本の3か国の中で建設業での死亡者数を人口比(10万人当たり)により比較した場合です、

調査自体は数年前の調べでありますが実は日本は圧倒的に最下位で日本はドイツの2倍イギリスの3倍にも上る死亡率とあります。

勿論、各国労働災害の認定や労働条件も異なるでしょうし信憑性は確実とは言えませんが死亡者数でいうと日本は3か国の中で最低ということは認識せざるを得ないでしょう。

では何故我々日本はこの3か国にみて死亡者数が多いのでしょうか?

日々現場に出ている私たちは安全である事はさることながら日本の建築技術、労働環境、品質管理など日本は世界的にトップ、一位二位を争うような国であると信じてやまなかった事にこのデータを見た時に落胆しました。

しかし暗に死亡率が高いのは直接的に危険な部分が事故に至らせているのではなく様々な要因もこれを助長させている所もあるのではないかとそれについてのネット上の記事があったので触れてみたいと思います。

現在日本の建設業界紙が毎日必ず触れている問題はひとえに現場の労働事情です。

労働者の数が足りないし技能や体力も低下している絶対的に労働不足の状況に刻一刻と向かっているそうです。

この労働問題はずっと前から指摘されていて役所や学識経験者が口を揃えて

「建設産業の労働問題は宿痾(しゅくあ)である」と口をそろえて言っているそうです。 宿痾って何だと? 検索してみると,宿痾とは“長い間なおらない病気”とある。

それなのに国も企業も誰も対症療法を施さず長い間,放置してきたのです。 そしてその日本の宿痾(しゅくあ)の事態は深刻で例えばわが国の建設労働者の非力さは

若年労働者確保の難しさも拍車をかけて世界最低だそうです。

その世界最低といわれる象徴的な証しの一つが袋セメントの重さです。 昔は日本も一袋50kgでした。それが時が経つにつれ40kgになり今現在は25kgです。

理由は単純に重いと担げないから…。

清水建設の国際支店や日本セメント協会の調査によると外国のほとんどの国の袋セメントの重さは今も一袋50kgか40kg以上である。

つまり,わが国の建設労働者は世界最低レベルの体力ということなのです。

技術的な事を抜きにしてもこの現実を我々は肝に銘じておいた方が良いというような

こんな記事を閲覧致しました。

但し体力が低いのと安全に仕事をするのはまた別の話でセメントの重さも労働力の低さも世の時代の流れによるものであり昨今の日本の社会情勢、少子高齢化や働き方改革の動きによって労働基準が定められているからではないかと思い我々職人が悪いわけではない。

と私は思い…何だか悔しい気持ちになりました。

では我々建設労働者が唯一出来る事とは何か?と考えさせられ

やはり日本の安全性を向上させるには職人一人一人がきちんとした職人の技術を身に付ける事!!

これこそが日本の建設業界の復興につながるものだと私は思います。

日本はもの作り大国と世界から賛美され続けていますがその理由は言うまでもなく技術の高さ、品質の良さを世界は知っているからです。

先程申し上げた日本の社会情勢、少子高齢化や働き方改革の動きに左右される事なく

我々職人は日々、努力を惜しむ事なく技術を磨き、技術をもって危険を回避し日本の建築業界を成り立たせるのであります。

それこそが世界に対抗出来る日本の安全が示されていくのだと思っています。

最近では我々の周りに目を向けると日本人以外の方々が現場で活躍するようになりました。今後の日本の建築業界に欠かせない海外からの人材は今も尚、推進していかないとなりませんし職人の技術、古くからある匠と称する業を知って頂き自身の国に帰っても恥じることのない日本人の技術を継承して頂きたいと思います。

さて先ほど働き方改革という日本の改革案についても少し触れさせて頂きたいと思います。

これは2020年東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設工事に従事していた現場監督の男性(当時23)が自殺した問題です。

新宿労働基準監督署は昨年末、残業による過労が原因の労働災害と認定したそうです。

遺族側代理人の弁護士の話によると自殺した男性は2016年4月大成建設などの共同企業体(JV)の下請けをしている現場管理の会社に入社し同年12月中旬から新国立競技場の地盤改良工事の現場監督をしてまた。ところが昨年(2017年)3月2日に失踪し、4月15日に長野県内で遺体で発見されました。皆さんもこの話は聞き覚えがあるかと思います。

弁護士によると新宿労基署は、男性が失踪前日までの1カ月に190時間18分の時間外労働をしていたと認定。(月25日働いた場合毎日8時~夜中の12時過ぎに相当)

長時間労働や深夜労働などの過重の業務によって精神障害を発病し、自殺に至ったと認めました。

安倍晋三政権が「働き方改革」を進める中での、典型的な過労死事例であると思います。これまで他人事であるかのように受け取られてきた働き方改革が、建設業にとっても“自分事”となった正に瞬間であったかと思います。

調べによりますとこれを受け日本建設業連合会(日建連)は昨年9月22日、週休2日の実現など働き方改革推進策の試案を策定した。2021年度までに現場で働く技能労働者を含めて週休2日を目指す。技能労働者の収入を減らさずに、適正な工期設定にも取り組む。昨年の12月に最終案をまとめたそうであります。

次いで全国建設業協会(全建協)も昨年9月に、地域建設業が目指すべき働き方の方向性を盛り込んだ働き方改革行動憲章を策定し建設産業専門団体連合会(建専連)も専門工事業者の週休2日の実現に向け、発注者に適正価格、適正工期についての理解を得たいとしているそうです。

業界一丸となって働き方改革に取り組む気運が盛り上がってきたといえる。

とこう記事が記載されていました。

建設業の働き方改革における当面の目標は、週休2日の早期実現です。

ですが、そのためには「適正工期の確保」と我々建設労働者の「賃金水準の向上」という、高くて分厚い壁が待ち受けています。

この壁の突破は容易なことではなく働き方改革の本丸は適正工期にありこれを確保しなければ週休2日はもとより長時間・深夜労働は全くもってなくならないと思います。

適正工期と言うのは簡単だが、実際にやるとなると当然、一社だけで出来るはずがない。

周知の通り我々建設業は重層構造になっているからです。ゼネコンの主な役割は発注先から土木・建築工事を請け負い、専門の工事業者をマネジメントしていくことにある。

実際に土木・建築の施工にあたるのは我々専門業者であり更に下請け孫請けと多くの請負い業者を抱えています。

多くの縦系統の羅列が伝書バトのように上手く伝達するには非常に困難で発注から施工まで計画通り工事が進む事はまずないでしょう。と皆さんは経験上いやというほど熟知されていると思います。

土木工事業界は機械化が進んだとはいえ雨が降ると行えないコンクリート打設工事や防水工事、塗装やシールも雨が降り続くと作業は中止になる。ひとつの工程で遅れが生じると玉突き連鎖が起こり納期が遅れることになる。

国内各地の建設現場の実態はそのほとんどが土曜日と祝日は稼働し休日は日曜日だけで

長時間労働や深夜労働が常態化しているのが今の現実です。

東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場は2015年10月に着工する予定だったが大幅に膨らんだ整備費が問題になり、計画は白紙撤回されました。このため着工は1年以上遅れ2016年12月にやっと起工式にこぎ着けましたが

当然、完成は2019年11月と定められたままでした。短い工期の国内でも例がない難しいプロジェクトとなりそのしわ寄せは間違いなく現場で働く我々職人達に向かう。

新国立競技場で地盤改良工事に従事していた現場監督の自殺は着工遅れによって蓄積された自責の念に耐え切れず労働問題の犠牲者になったものと等しく

下請け業者である我々は工期支障をきたす様な事があれば次から仕事を失う。絶対に工期に遅れてはいけないというプレッシャーゆえに、休みなしとなり、長時間・深夜労働を余儀なくされている。

労働基準監督暑は我々の現場に来て安全衛生には目を向けて是正報告書だの是正勧告書だの時には業務停止命令まで突き付けてくるばかりです。

では労働者の待遇改善についての労働時間や適正な残業時間など本来労働者の働く上の権利についてはほとんどと言っていいほど関心を示さない

そういう事は社内規範や企業努力の話だろうとでも思っているのであろうか。

長時間労働による被害者が出てしまいこれ以上の被害を無くす為に労働者の待遇にも、もっともっと目を向けてもらいたいとわたしは思っています。

「適正工期の確保」は建設業界の悲願だが、それは至難の業といえる。

建設業界が掲げる「働き方改革」は、絵に描いた餅に終わることになるかもしれない。

しかしただそれを下請け企業は傍観せざるを得ないのだろうか…

これもまたであるが少しずつでも私は何とかしたいし出来うると思っています。

最低限ですがまずは知る事が大事です。そして興味を持ち自分の置かれている状況を見つめ直すということで違いは出てくるはずです。

自分達の環境を変えるのやはり自分達自身の気持ちからであり

そのことによって我々の働く建設業界が今日よりも働きやすい職場に生まれ変わっていくものだと私は確信しています。

以上

最後に本日お集りになった皆様のより一層のご活躍とご健康を祈念する言葉を添えさせて頂き

安全衛生推進大会の講話と代えさせて頂きます。

僭越ながらご清聴ありがとうございました

平成30年6月23日    大堀架設工業   大堀 勝利

閲覧数:11回0件のコメント

最新記事

すべて表示

法人成り

bottom of page